精神分析のススメ

1970年代のNYCで一世を風靡したヒップな精神分析の啓蒙をめざす狂気専門家のブログです。

【虐待死】について思うこと 子供は親が大好きです…何をされても…

headlines.yahoo.co.jp

 

この事件で、虐待する親への親権停止が即刻出来るよう、法改正を迫る動きが高まるのでしょう…

 

虐待されても「ママゆるして」に島田キャスター思わず涙 結愛ちゃんは救えた命(FNN PRIME) - Yahoo!ニュース

 

「子どもは親の持ち物ではない」 国会議員から「親権制限」訴える声(J-CASTニュース) - Yahoo!ニュース

 

感情的には

子供を虐待する親は自分が子供にやった様な体罰を与えて◯せ

となるのも分かります…

 

私も、

「幼児性的虐待加害者のティンなんて切ってしまえ」

と思っていた時期もありましたが…

この記事に書いた様に

性器なんか切ったって、性犯罪をするやつは犯す - 精神分析のススメ

今となっては、浅はかだったと思っています。

 

タイトルにも書きましたが、

子供は親にどんなに酷い仕打ちをされても

どんなに裏切られたとしても

「大好き」

なのは中々変わらないのです。

 

例え理不尽な仕打ちを恨み、憎んでいても…

「いらん」という気持ちを抱きながらも…

 

親(愛した人)からの別離には必ず

「帰りたい」

という気持ちが掻き立てられるのです。

 

暴力は「悪い」から、法で罰すべき。

とは「分かり易い」理屈ですが…

 

「暴力」に「愛憎」という要素が加わると

限りなく「悪」に近い暴力的行為が

極限状態での「愛情表現」にもなり得るのです。

 

それは私にとっては

断固として癒されるべき

闘うべき「狂気」でこそあれ

「罰」すべき「罪」だとは思えません…

 

罰を与えれば(恐怖心から)「悪い」ことはしなくなる

 

というのは短期的には大変有効です。

 

行動療法の祖、スキナーは

 

ねずみや鳩にえさ(報酬)を与えたり

電気ショック(罰)を与えることで

自然では決して見られない「芸」を教えこみ

 

動物の行動は「報酬」と「罰」によって形成される。

 

と結論を出しました。

 

動物(や子供)に電気ショック(罰)を与えることで

好ましくない行動を消去し

餌(報酬)を与えることで

人間(大人)の思うがままに行動を規制することが可能である。

 

ということです。

 

 

確かに、罰は効率的に子供や動物の行動を規制することができます。

 

しかし、罰を与えることで不安や恐怖といったストレスが生じます。

 

抑圧され、歪められた欲望は必ず歪んだ形で発露します。

 

例え、虐待する親から親権を奪い、法で罰することで見せしめにすることで

暴力を禁止したところで

「愛する対象(=子供)を思うがままにしたい」

と思う心は消しされません…

 

思うがままにならない憤りは

身体的暴力のみならず、陰惨な心理的暴力として発露します。

 

一番最初の記事を読み進むにつれ

児相の「ケアや支援が必要」というスタンスにも関わらず

父親が児相の介入に迫害妄想を募らせていくのが手に取るように分かります…

 

http://ippjapan.org/pdf/Opinion042_KIkeda.pdf

 

上記の論文ではアメリカの児童虐待と、行政の対応の実態が良くまとまっていると感じました。

 

6ページ目でも指摘されているように、児童虐待法の充実しているハズのアメリカでは虐待が増え続けています。

 

アメリカには「通告法」というモノがあります。

 

「虐待を疑われる事態があったら、

すぐに行政機関に通告する。

それだけでなく、子どもに接することが多い

医療従事者、教育従事者、社会福祉関係職員も、

虐待の可能性があれば通告するよう求められた。

これにより通告数が激増してしまう。

中には嘘の通告もあった。」

 

眠ってしまった赤ちゃんを

「10分だけ…」

と、車に置いて買い物に出かけたお母さんが、駐車場に戻ってきたらパトカーが来ていた

とか、

庭先で幼児をオムツ一丁で遊ばせていたら(性的虐待を疑われて?)児相(?)に匿名で通報されていた

という話もあります。

 

癇癪持ちの赤ちゃんを持つご家庭では、

何をしても泣き止まない時には

「近所や通行人に通報されるのではないかと、ヒヤヒヤする」

と言う話です。

 

学童期になると、子供に「虐待されたって先生に言うからね」と、脅されて躾もママならないという冗談が、冗談にならないケースもあります。

 

だからといって、

「法規制など必要ない」

 

と言うつもりはありません

し、自分の子供を殺害したり怪我をさせたり性的に搾取したら、

赤の他人に危害を加えたと同様に、然るべき「罰」が下されることは当然です。

 

 

が、今回の事件に対する

「資格のない親からは親権を剥奪すべき」

という反応には

やはり

「ちょっと待て、よく考えてみそ」

と感じます。

 

アメリカにおける児童虐待への対応は…

虐待があった家庭に対して、一貫して、

できる限り家族を修復し、親に立ち直ってもらい、

その元に子どもを戻して再統合するという制度」

が中心に据えられています。

 

親へのケアをおろそかにして強制的に親権を剥奪することで、

子供の心に残る別離の傷や罪悪感を考慮すると

自明の理といえましょう。

 

下の発表にもあるように

http://www5f.biglobe.ne.jp/~ainote/siryou/hamo-ozaki-1.html

里親や、受け入れ機関、システムの充実*1

加害者の親へのケアや支援をおろそかにしては、

児童虐待は隠蔽され、陰惨になるばかりでしょう…

 

虐待(やひきこもり)を予防するには

「子育ては親がするもの」から、「子育ては地域住民でするもの」

へのシフトで「家族」を開かれたモノにすることが必要だと感じます。

 

 

「あそび」は「あほみたい」

だから

「やめる」とおやくそくした5歳児…

 

父親が厳しい躾をしたとありましたが…

 

子供はあそぶことが「仕事」です。

 

昨今の「歪んだ親」はおそらく

天真爛漫な子供ではいられなかった

あそべなかった子供達なのではないでしょうか…

*1:ほとんどの里親はこの発表にもあるように真摯に児童の受け入れや、家族の修復に取り組んでおられますが、稀に受け入れた子供を次々に殺害したり性的虐待をしたり、という凄惨なケースもあります