一応、これらの記事の最終回です。
今日は、アメリカが誇る分析の大家、
偉大な火星人*1
ちゃうちゃう、
コフート大先生に挑戦してみます。
精神分析的アプローチのみで、
境界例の治療に及ぶのは、
はっきり言って無謀だ。
というのが現在アメリカでは一般的な見解です。
が、例えば認知療法や行動療法で、
自殺願望、薬物依存等の症状緩和のみに
注目していると、
根源にある愛情飢餓感、
断絶不安を解消できるわけではないので
もぐらたたき状態で、
ひとつの症状が治まると
異なる症状が出てしまうこともままあります。
カエデさんの、
「依存先が性行為から彼氏になっただけなのでは?とも思っている」
という懸念は、
この根底にある飢餓感、不安感を
拭い切れないからではないでしょうか。
カエデさんの記事はこちらです。
性依存症 気が狂うほどの性欲に押しつぶされる – メンヘラ.jp
彼女の記述で、グッときてしまったのが、
「相変わらず過去のトラウマ等々で
事後ヒステリーを起こしたりすることも
多々あるのですが、
隣で彼氏が一緒に泣いてくれるので、乗り切れています。」
というクダリです。
最近…
と言ってもここ20年ですが…*2
心理学では、
母子関係の研究を元に、
共感力を助長する母親、
情動調整能力*3を伸ばす
母親のあり方が明らかになってきています。
泣いている赤ちゃんを泣き止ませたり、
泣きそうな赤ちゃんを落ち着かせることができる母親とは、
赤ちゃんの要求に、敏感かつ速やかに対応し、
「抱きしめる」母親。
というのは当たり前過ぎる結論です。
が、それでは全面的に母親に頼る、非力な赤ちゃん像しか
浮かび上がってきません。
そこで、「理想のママは魔法使い」論に反し、
真の情動調整力は、
母親が要求に応じてくれるから伸びるのではなく、
元々赤ちゃんが持っている
という観点から
赤ちゃんの発達を助ける母親とは、
赤ちゃんの興奮状態に、自分の表情や
声の調子を合わせて同調する(歩み寄る)ことで、
赤ちゃんの情動調節をリードすることができる母親である。
ということが言われ始めています。
どんなママかと簡単に言うと、
興奮してキーっと叫ぶ赤ちゃんに合わせて、
自分も遊び半分で興奮する
声を一旦、一緒に上げてから*4
シーっと宥め、
自分も一緒に興奮して、落ち着けられるママって感じです。
この母親像に、
私はハインツ・コフートのいう、双子共感を思い起こしてしまいます。
「感情の混乱が激しくストレスに脆弱な」
B群のパーソナリティ障害の
自己愛性な人々について
中々良い事言ってくれるのですが、
学生時代に読んだっきりで、
ぼんくらな私にはさっぱり訳ワカメ。でしたので、
この方の簡潔極まりない素晴らしいまとめを参照して下さい。
http://d.hatena.ne.jp/away_sw/20050222/1109071522
シカゴを拠点とし、
余所者にはとーてー理解でけへん独自の言語体系を編み出され、
理論的にはがっつりフロイト拠り、
難解度はラカン級、
コフート派(= コフーシアン)という、
まるで火星人(= マーシアン)な派閥もついておられます。
分析家と患者の関係性という特殊な文脈中、
立ち表れる「転移」という幻想を取り扱う上での
共感の理論を説いておられるので、
このポップな応用を知ったら
お墓の中で身もだえされること間違いなしでしょう。
それは何ぼなんでもちょっと勘違いちゃう?
という部分も無きにしも非ず、
ですが、
分かりやすいし、ま、良いか(笑)ってことで、
こんな解説もありました
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20121115/330782/?ST=p_bizboard
「拡大解釈するでないっ」
と、火星人(しつこいっすね)、
じゃなくって、
コフーシアンな大先生方に一喝されるのが
怖いのですが(ビクビク)。
自分を愛する為には、
根源的不安や、不足感を、
(母親的な?)他者から「良い物」「必要な物」を
与えられることによって
解消するだけではなく、
絶望感や、破壊衝動をも分かち合える、
理解あれども、
一緒に絶望や破壊衝動に翻弄されてしまうことのない、
揺らぎない(父親的な?)誰かが存在している、
と感じることで充足、安心感を得ることが必要、
ということにも繫がっているように思えます*6
私の推測ですが、
カエデさんは、
きっと彼氏さんと、
お互いの双子共感幻想を充たし合う関係性を
築き上げることができたのではないでしょうか。
5回に渡って長々と書き綴りましたが、
お二人が、安心と充足ある関係を続けられることを、
カエデさんが働く喜びを見出せることを、
蔭ながら応援しています。
拙い文章に、最後までお付き合い頂き、本当にありがとうございました。