精神分析のススメ

しがないメンヘル職人です。70年代のNYCで一世を風靡したヒップな精神分析の啓蒙をめざしております。

EDと、父親不在と、村上春樹

最初にお断りしておきますが…

村上春樹氏がEDという話では決してありません。

 

「父親」、「母親」、というのは便宜的に使っているだけで、実際の両親ではなく、象徴的な言語だとご理解下さい。

 

性依存の話が終わったところで、EDっていうのは、

ちょっと野心的すぎ?

ですが、精神分析のススメですからね。

 

性(生)エネルギーに直接関係したトピックが求められているかな…

という理由は全くの後付で

最近、村上春樹氏の「パンや再襲撃」を読んだのと

皆が大好きEDを公言して憚らないはてなの有名人

id:Delete_All フミコさんに

触発されました。

 

自己実現できた大人になるって実はとても大変な事です。

と、最近特に感じます。

色々な方のブログを読むにつけ

日本人の男性には日本特有の困難が付きまとっていると感じます。

 

EDや、EDを含む性機能障害(インポテンツ)は

 

心理的に男として機能できていない

ということが肉体的に表現された心身症である

 

といえましょう。

 

たまに立たないのは、当たり前ですが…

勃たないことがショックで後を引く

勃たないかもしれないから…お薬に頼る

というのは、立派に心の病です。

 

大人の男になる、ということは

子供を持つ持たないに関わらず

「父」との同一化を果たすということでもあります。

 

「日本には父親がいない」

と言う話が鈴木晶氏と内田樹氏の対談本にありました。

(大人は愉しい ちくま文庫

 

全く同感です。

 

更に、日本の男性は大人の男として自我を確立する上で

「母」という女性原理に同一化しなければならない…

現代日本の社会問題は

父親不在の問題ではなく、母親機能不全の問題だ

ということで

「ふぉー。上手にまとめはるなあ」

と感心させられました。

 

お二方は離婚されておられるので

特に「母」を満足させられない

「父」の不能感も痛感されておられることでしょう。

私のような若輩者が言うのはまことに不遜ですが

痛々しいことです。

 

ブログで様々な男性の

職場での不満や父親との戦い(又は全く触れていない)を

読むに付け

男性原理の欠如、女性原理の機能不全が

如実に浮き上がってくるように思います。

 

私がブログに惹き込まれる理由の一つには、

 

読んでいると、現実と幻想の錯綜を感じるからです。

 

ネットでは現実で他人に吐くには躊躇するような

言葉の暴力が頻繁に起こりえます。

 

慮りだらけでがんじがらめになっているかと思えば

このような、破壊衝動の無法地帯が発生してしまうのは

職場での上司とのやり取りや

面接の描写を読んでいると顕著な

他人の「上に立つ立場」に在る男性の不全性、

ひいては「父の不在」に端を発しているように感じます。

 

「父親の機能」とは、簡単に言うなら

「破壊性の制御」による「創造性の実現」を図ること

に尽きると思います。

 

先輩分析家の言葉を借りると

「ペニスの扱い方を教える」

と言えましょう。

 

ここからは、あくまで象徴的言語です

ので、本気で子育ての知恵にされると困ります

 

念のために誤使用の注意を貼っておきます

免責事項 自己紹介に換えて - 精神分析のススメ

 

フロイトの心理発達理論に沿うと

男児の発育に於いて「ペニスの扱い」が課題となる時期は

2回訪れると言えましょう。

 

まずは名前からも明らかですが、

3-6歳頃の、男根期(エディプス期とも言います)です。

 

具体的に言いますと…

この時期に、男子は立ちションを覚えます。

おしっこするときに、

トイレを汚さないように、

いかにおちんちんを支え、標的を定めるか…

 

母親からの分離に際し(父親の)助けが必要

と同時に、

対抗心の芽生えとともに、勝負に勝つ為には、

攻撃衝動に明確な方向性や、計画性、戦術を与える

という、(父親からの)教唆が必要になる時期でもあります。

 

この時期は「遊び」も「真剣勝負」ですが、

父親が大人気なく徹底的にやり込めてしまっては大変困ります。

 

大人に「勝てない」絶望感を克服できないと

鬱な男性の自己不全感や

自己愛な男性の「羨望」として

後々の「神経症」の核となってしまうからです。

 

かと言って「父」が安易に敗北してしまうのも問題です。

「勝利」にまつわる「父」の壊滅に対する「罪悪感」に苛まれ

「成功」しそうになると

わざと失敗したり、鬱でやる気を失う

といった古典的どMな「神経症」になってしまいます。

 

フロイトは、性器期(9-12歳)の親との関係については

あまり述べていませんが

この時期には心身(=ペニス)に大きな変動が起きます。

 

可愛い男の子から、魅力的な男性に

スムーズに移行するためには

更なる母親との「断絶」と、自己の「革新」

といった「父親の機能」の働きが必要です。

 

男根期に尿の処理に助けが必要であったように、

性器期においては精液の処理にも(父親の)助けが必要です。

 

ペニスから出てくる尿と精液を適切に処理し

男性の「身体」に対する清潔感や、自信感を育む為には

「父の機能」が不可欠です。

 

母親がいつまでもおちんちんの世話をしていては

「母子分離」が不可能なばかりか…

 

過剰な性的興奮に苛まれ

近親相姦に対する不安が昂じて

性的興奮への葛藤が耐え難く感じる

という由々しき事態へと発展します。

 

(母親がいない)「世界は楽しい感」、

(母親がいなくても)「自分は大丈夫、できる!」

という自信と達成感

を抱かせるという重要な機能は

「母子」という二者間の繋がりに割って入る

「第三者」である

「父」が果たさねばならないモノなのです。

  

前置きが長くなりましたが、

ここからが村上春樹氏の「パンや再襲撃」の感想(?)です。

 

「パンや再襲撃」は

正に父親不在のトラウマを

女性(=母親)の助けを借りて克服しようとする

日本男児の話のように思われます。

 

結婚したカップルが、ある晩耐え難い飢餓感に襲われ、

妻の主導権の下、二人で

(深夜開いているパン屋がないので仕方なく)

マクドナルドを襲撃する話です。

 

二人の飢餓感を満たすには、

10余年前に尻すぼみに終わった夫の「犯罪」

パン屋襲撃を敢行し、

成功させなければならない。

と妻が信じるが故、二人は犯行に及ぶ。

というのが大変興味深い点です。

 

若き日の夫は働くことを拒否し

パン屋を襲撃することで

その日を食いつなごうとします。

 

働き、社会に迎合することを拒否する、

と言うのは成人する前に通過する

「父なるモノ」への反逆である

といえましょう。

 

若い彼らの反逆の試みが、

「父性なき父」である

パン屋の主人*1

非暴力的な申し出によって方向性を失ってしまう。

 

大変理不尽ですが、

「父」なるものと勝負できなかったことが

トラウマになり得る

ということだと思います。

 

河合隼雄氏のいわれた

物分り良すぎる親では困る

という言葉が思い出されます。

 

パン屋の主人が

ワーグナーのレコードを持ち出すのではなく

じゃんけんで勝負でもしてくれたら

再襲撃しなくてよかったのかもしれません。

(私は平和主義ですが

マクドナルドなんか

どんどん襲撃されて結構

とおもってしまいます。)

 

村上春樹氏の描かれる世界(少なくとも長編)では

常に女性(=母)は

突然消えうせてしまう存在です。

これも、母子分離が父親の補助によって

徐々になされない為

トラウマになって残ってしまう日本人の*2

深層心理に深く訴えかける所以ではないでしょうか。

 

母親との一体感が突然失われるという幻想(内的現実)は

愛されない自分

全能感に欠ける自分

として、子供の心に

・欠乏感

・愛情飢餓

・分離不安

そして…

・全能感の欠如 (ED に如実な不能感の種) 

となって残ります。

 

そこで、日本男性諸氏にアドバイスですが、

バイアグラや、シアリスには危険な副作用がつきものです。

マスターべションで立つのに、

女性相手で立たないというのは、

身体要因ではありません。

 

100%心理的要因です。

 

女というモノに対する恨みつらみもありましょうが‥

男性を男性たらしめる「攻撃性」に対する怖れ

挫折に対する不安

羞恥心と立ち向かい

自分のモノとして受け入れ、慈しむことで

「規制心」を養うことが大切だと言わせて戴きたい所です。

 

父親不在テーマ、こんなんも書いてます。

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理想の父についても考察してみました

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*1:パン=乳の代わり ということで

「父」が「母」の代わりでしかあり得ないことの象徴だと思います

*2:だけじゃないから、世界各国で翻訳されるんでしょうね