精神分析のススメ

1970年代のNYCで一世を風靡したヒップな精神分析の啓蒙をめざす狂気専門家のブログです。

【暴徒】 と 「コントロール」

前回の記事で

母が壊れる時 - 精神分析のススメ

 

「父」が「ムスコ」を「コントロール」できない悲劇が

「母」が壊れる瞬間に立ち現れる…

 

みたいなことを書いてみましたが…

 

今日は家族の外で見られる「父」の機能不全の悲劇について

書いてみようと思います

 

 

ツイッターで、西成区の暴動の映像が上がっていました。

上記のツイは、コメントをRTしたのにお返事を頂き、

その会話の最後ですが…

 

元ツイについていたコメントが色々な意味でコワいです。

(一番コワかったのは

今の日本は平和で良かった♡

というやつですが…)

 

渋谷のハロウィンの暴動で出た

逮捕者に関するツイートでも感じましたが

 

暴徒は征伐されて然るべき

 

逸脱は罰せられて然るべき

 

という短絡的な意見が…

私にはめちゃくちゃコワイです。 

 

暴力を暴力で鎮圧する「規律」は

「罰則の恐怖」でしかなく

自発的「倫理」の欠如を育む

「父」の機能不全でしか有り得ないのに…

 

「法」の名の下に行使される「暴力」が

「正義の鉄拳」として容認されるのは

オソロシイことです。

 

ということで、

理想の「父」による

欲動の「コントロール」とは如何なるモノであるべきか

「理想論」を展開してみたいと思います。

 

カタカナ乱用するとバカっぽいので

私的には避けたいのですが…

 

Control

訳語を探すのが難しい言葉です。

 

前記事では「規制」とか「制御」を混ぜて書きましたが…

それでは「父」の「支配的」なニュアンスは伝わっても

「自立支援」のニュアンスが伝わり難い…

というのがネックです。

 

80年台のジャネットジャクソンのヒット曲

www.youtube.com

(懐かしーですね

ジャネット、可愛いーですね

今は整形しまくって亡きマイケルそっくりさんになってしまいましたが…)

 

「コントロール」は

 

自分の生き方は自分でコントロールする(=決める)

誰にも口出しはさせない

 

という「支配」「制御」「規制」という日本語訳では伝えきれない

「決断力」とか「自己責任能力」等のニュアンスを多分に含む

「自立」のキーワードです。

 

「ムスコ」の「自立」を可能にするコントロール

「リビドー(欲動)のコントロール

と密接に関わりがあります。

 

字幕がないので分かり難いかもしれませんが…

ジャネットの「コントロール」のPVの始まりで

 

「ショーの練習が終わったら夕飯食べて帰るわ」

というジャネットに

「でも…遅くなったら夕飯が冷めちゃうわよ」

と、馬耳東風なママと

「迎えの車が来たよ」

と渋い顔のパパ…

 

彼女は両親に

「そろそろ一人暮らしがしたいの。もう、部屋も見つけてきた」

と、独立する旨を伝えて

パパが呼んでくれた(白人の)運転手つきの高級車を断り

自分の(?)ボロ車に乗り込みます。*1

 

車がないと何もできないバカっ広ーいアメリカでは

16歳になって運転免許を取得し

親から譲り受けたボロ車で自由行動し始める*2

というのが定番です。

 

アメリカでは特に

車=自立

でもありますが…

「コントロール」曲中に挿入された

急ブレーキの音が象徴する

「制御不可能」の不安

を掻き立てるモノでもあります。*3

 

アリがちな夢でも…

車を運転するも地図がない

とか…

車にブレーキ(又はハンドル)がついてない

とか…

 

止められない(=コントロールできない)

目的地にたどり着けない(=人生の目標を達成できない)系の

不安夢に頻出する車は

「欲動」の象徴でもあります…

 

西成の暴動では自転車が

渋谷ではトラックが

壊されたというのも

若者や経済的弱者の「イキ場のない衝動」が故

目的地に辿り着くための手段を破壊してしまう

神経症的症状を象徴している様に感じます。

 

「生きる」場所も「行く」場所もない人々の

自己主張は生産性を欠いた

「逸脱」でしかありえません。

 

「母」の機能が「受容的」な「おっぱい」に象徴される

充足と安心感ならば

「父」の機能は「能動的」な「男根」に象徴される

排除(排泄)と興奮です。

 

この記事でも触れましたが

EDと、父親不在と、村上春樹 - 精神分析のススメ

「父」たるモノ、ムスコをキレイに保ち

規制心を育まなければなりません。

 

「母」が子供に「愛情」を注ぐなら

「父」は子供に「規律」を与えます。

 

「生きる衝動」であるリビドーが

「対象」を見失い…

 

「貪欲」や「羨望」といった

「欲しいモノ」を破壊する

壊滅的なモノになってしまわないように

 

男根(=自主性)を「制御」し「方向性」を与えることで

美しい「秩序」を保つのが

「父」の役割です。

 

「周囲との調和」が究極的な「倫理」の日本では

「父」の機能は集団に分散されている

とも言えましょう。

 

アメリカの教育現場を見るにつけ

「集団の調和」を重んじる余り

成員が均一であることを希求する日本では

「個」の意見やアイディアを受容し

要求や主張を「方向」付ける教育は

実質上皆無だと感じます*4

 

自己主張=ワガママ

という印象が強い日本では

調和を重んじる余り

「主張する」自我を育む「父」の機能は

「なくてよい」どころか「あっては困る」モノに

成り下がってしまったのではないでしょうか。

 

周囲を慮り「我慢」することが「美徳」で

「愉しむ」ことは利己的でマナーに背くと看做され

不満を主張することが

ワガママと看做されがちな日本においては

 

建設的な意見を主張する「可能性」は

限りなく「皆無」に近く

 

我慢できない人々(=子どもたち)が

一致団結して不満や鬱憤を表現しようとする時…

 

(それが如何に「非暴力的」であろうと)

「逸脱」としか見做せない

頑な感受性が蔓延している様に感じて

私はコワイです。*5

 

「主張」を(集団の調和を乱す「逸脱」と見做し)

育もうをしない「無能な父」こそが

「不満」を抱く「自我」から

「否」という選択肢を奪い

無能感や絶望感を植え付け(鬱→自殺してしまうか)

暴力的な怒り(最悪のケースでは無差別殺人とか)を誘発します。

 

「正義」という「理想」が

「暴力」は「力」で制圧されて然るべきという

「否」ということを認めない「同調圧」に歪められる時…

 

「正義」は「否」を表現するモノへの

加虐衝動の正当化に成り下がり

 

「自己主張」にまつわる苛烈な罪悪感

(=「自立」することへの罪悪感)を増長し

 

警察機関の「暴力」を容認し*6

法に従わないという「理由」で

暴力を正当化し…

 

「父の不在」=「倫理の欠如」という機能不全から

「父」=「(正しい)暴力」という

「妄想」を繰り出します。*7

 

西成のケースの様に

不正に対処をせず

社会的弱者の不満を暴力という形で顕在化させておいて

更なる暴力で「制圧」する機動隊は

加虐衝動に駆られた無能な集団でしかないのに

相手が「先に」攻撃したからとか「治安を乱した」から

という理由で暴力を受容し

正当化さえしようとする感受性は

それが如何に矮小なモノでも

危惧に値することです。

 

そのコワさは渋谷のハロウィンで

目前で繰り広げられる「逸脱」を放置した挙句

事後「みせしめ」の数人を罰することでしか

祭りの「ワク」を設置、施行する手段を持たない

 (無能な)警察に「スッキリ」する人が多いということにも

繋がります。

 

「罰則」による「倫理」の強制に

「安堵」し「高揚」する感受性は

法の尊守に「我慢」や「抑圧」といった被虐性を見出す

感性と表裏一体と言えましょう。

 

暴力的な「逸脱」を「制御」する「理想の父」は

触れてはならない「枠組み」を

「守りたい」と希求する心を育みます。

 

「理想の父」と「愛する母」を「慈しむ」心から

自発する倫理感ではなく

「罰則」の恐怖に歪められた「倫理観」は

不満を増長し鬱憤が暴発する悲劇を内包します。

 

渋谷の暴徒は

「壊したら直す」

「汚したら片付ける」

可能性を育む「父」を欠き

「直せない故障」と

「落とせない汚れ」

に永遠に苛まれる

負のスパイラルに陥った「子供達」です。

 

「逸脱者」を罰したトコロで

償いを育む「愛」は生まれません。

 

喪われた「理想(=父)」を悼み

加虐衝動の制御と償いに

正義と倫理を見出すためにも

精神分析は如何でしょうか。

*1:結局は

妹の独り立ちを応援しなくちゃだよなー!

と盛り上がる兄ちゃん達に拉致されてますが…

*2:今時はチェインスモーカーの歌にもあるように

【ザ・チェインスモーカーズ】The Chainsmokers 大人になれない僕達 現代アメリカの若年層 ミレニアルの闇 - 精神分析のススメ

「自分じゃ買えるハズもない」新車のローバーに乗ってる

若者だらけなのかもしれませんが

*3:因みに、彼女のイヤリングが鍵なのも…

車や家の鍵=自立の象徴

と言えましょう。

鍵は男性器、鍵穴は女性器の象徴でもありますが…

お兄ちゃんのマイケルそっくりな顔にどんどんなっていく

ジャネットの男根羨望の現れかもしれませんね

*4:最近では現場で頑張っている教師の方のお話も聞きますが…

少なくとも私が知っている日本の教育システムでは

「皆」が同意する「正解」を如何に効率的に再生できるか

をみっちり訓練されたと思います。

基礎知識を身につける上では

そのことが絶対的に「悪い」ことだったとは

思いませんが…

自分の意見や考えを

論旨立てて表現する訓練は全く受けてこなかったので

国外に出た時にめっさ苦労しました

*5:コワすぎて、日本脱出したくらいです

*6:ハルオさんの話なんか読むと

漫画を描いたら1日で200万Pvのアクセスがありました - 警察官クビになってからブログ

「否定」=なきがモノとする

の方が適切かもしれませんね…

ハルオさんの場合は

「規格外」だったからという「理由」が

「暴力」の正当化に繋がっており…

本当にオソロシくも凄まじいお話でしたが…

*7:これの

元ツイも「理想的な父の正しい怒り」という

「妄想」だと私は思います