精神分析のススメ

1970年代のNYCで一世を風靡したヒップな精神分析の啓蒙をめざす狂気専門家のブログです。

【ゴールデンカムイ】罪悪感のないサイコパス その2 鶴見

「狂気」とは

個人の「認知の歪み」が

それに伴う「暴力」をもって

「他者」を巻き込むモノだ

と常々感じる。

 

ゴールデンカムイのエンタメ性が「スゴイ」所以は

史実を元に様々なエピソードを

これでもかって意気込みで

盛り込んでくるトコロでもあるが

何よりも

狂った「人殺し」達の悲哀と崇高な理念を

綿密に描写してくるトコロだと思う。

 

欠けた頭からドロっとした液体を垂れ流す

醜悪な鶴見ですら

目が離せない魅力を有する。

 

鶴見が肌見放さず身につけていた

妻子の骨よりも

アイヌの権利書を掴む

クライマックスに

鶴見は「私情」よりも「大義を選んだ」

という「解釈」がブコメにあった。*1

 

私には鶴見が

「自分が愛したモノ」

を手放し

アシリパのモノ」

に手を伸ばす「盗人」にしか見えない。

 

ロシアとウクライナを目の当たりにしてつくづく

戦争の「大義」とは

「盗み」と「人殺し」を正当化するモノであり

倫理が破綻したサイコパスの「嘘」でしかない。

と実感する。

 

妻子が殺されたのは

長谷川の「嘘」のせいだ

という「現実」を「否定」する

鶴見の「自我の脆弱さ」こそが

「邪悪」なニンゲンの悲哀であり

戦争の「狂気」の根底にある。

 

自責の念に苛まれ続けたソフィアを

良心の呵責なく

「ゆるす」と言い放って

殺した鶴見。

 

彼が憎悪するべきモノは

罪なき赤子を殺したソフィアとウィルク*2ではなく

「甘い嘘」に依存する己だ。

 

息を吐くように嘘をつき

「特別」になりたい

凡庸なモノ達を

喰い物にするサイコパス

相手の罪悪感につけ込むのも上手い。

 

「黄金」を手にする為

無垢な少女と共に「旅」した

尾形の最期には「救い」があった

大義をかざして使い捨ての兵士達を消耗し

アイヌの土地」を掴もうとする

鶴見の最期は

「約束」を「嘘」にしないように

「頑張る」ヒーローを

道連れに地獄に堕ちようとする

「救い」のないものだ。

 

それでも読者は

鶴見の

素顔に「悲哀」を

嘘に「大義」を

見出す。

 

己の「嘘」に決して向き合おうとしない

鶴見的に脆弱な「父」の

「虚構の愛」に依存するが故

頭が欠け

他人の皮をまとう

醜悪な鶴見の「甘い嘘」に「大義」を見出さざるを得ない

月島的に凡庸だが

真面目で常識的な

どM兵士達が

罵倒され使い捨てられる事に

ヨロコビ見出す

「美しい」ジャパンの被虐の「狂気」を再確認して

どんよりした。

 

罪悪感と共に「光」を見出した

尾形の「良い」最期に比べて

鶴見の最期は

「後味悪い」クライマックスだった。

 

私的感想です。

 

サイコパスの講釈

及び

尾形の最期の感想はこちらです。

 

neofreudian.hatenablog.com

 

ダークな私の大団円の感想はこちらです。

 

neofreudian.hatenablog.com

 

*1:その「解釈」は鶴見を妄信する「幼稚」な鯉登少尉のモノだが

*2:父母の象徴だと私は解釈する。

日本では守るべき「良心」は「両親」だ。

「良心」が欠如したサイコパスには愛すべき「両親」が居ない。