ラップは狂気?
以前、エミネムについて、「韻を踏んでなんぼのラップは狂気の歌謡」と書きましたが、
狂気 と 自己表現としての芸術 エミネム A.k.a スリムシェイディ - 精神分析のススメ
今日はそのことについて、掘り下げてみようと思います。
日本人の統合障害の患者さんには、ないのかもしれません。日本語訳探したのですが、見つかりませんでした。
欧米では、統合失調、特に、両極性の躁状態にある患者さんに見受けられる、クラング・アソシエーション(Clang カーンと鳴る鐘の音、 Association 連想)という思考障害の症状があります。
これは、こちらに分かり易い解説ありますが、
連合弛緩、言葉のサラダ、言語新作のニュアンスの違い | えさきち。
観念奔脱(全力ダッシュ的に、次々とアイディアや話が出てくる)や、連合弛緩(因果関係の欠如)とかにも通じるのですが、クラングには、「音が似ている」連想(連合)、という特徴があります。
カンカン鐘を鳴らしながら、猛スピードで街を疾走するも、火事現場がどこか分かっていない、赤信号無視の消防車のような、躁状態の患者さんのイメージなのでしょうか。
私が、たまたまヒップホップ系のラジオを聴いている時に居合わせた同僚の精神科医(インド系)に言われました。
「あんた、こんな音楽聴いてるん?完全に躁状態な音楽やな。黒人は、常に虐げられているから、ブレイクすると、大変なんやろね。信じられへんくらい、誇大妄想がどんどん膨らんで。」
みたいな事を。
そこで、
私: 「じゃあ、ボリウッド映画の躁全開なストーリー展開は?」
って返してみましたが、
彼女: 「それは文化遺産。」
と、華麗にスルーされてしまいました。
。。。。。。
確かに、そう言われてみると、ヒップホップやラップは、超早口多いし、(私達の黒人英語・文化理解の欠如のせいもありましょうが)ワケ分からんという、躁の症状に似通うものがあるかも…
エミネムも、
「オレンジは韻を踏まない言葉、という先入観はムカつく。どんな言葉でも韻を踏む。」
と言いますが…
storage booth すとぉりぃぢ ぶぅーす
door hinge loose どーぁりんぢ るぅーす
four inch screws ふぉーぉりんち すくるぅーす
foreign tools ふぉーぉりん とぅーうす
orange juice おーぉりいんぢ じゅぅーす
ってな具合に、リエゾンや音便変化を駆使して、かなりクレイジーにめちゃくちゃな韻を踏むんですよね。
ここまでやられてしまうと、確かに、言語新作(存在しない言葉を作ってしまう)という躁状態でも診られる思考障害ならぬ、韻新作(存在しない韻を作ってしまう)かい?って気もします。
精神障害をきたした患者さんの思考障害と、芸術家である、詩人の韻を踏んでの詩作は違う、とは言うものの、ここで全文訳されているエミネムのフリースタイルラップ
とか見ていると、本当にノッてくるとペースが速まり、意味不明って訳ではないのですが、ゾッとすること、あります。それが、芸術作品に触れた感動なのか、自分には理解不可能なモノ(狂気)に対する恐怖なのか、よく分からなくもなります。
余談になりますが、このパロディ、めっちゃ笑えるし、政治的メッセージも、エミネムの一般論よりは深く、良いとこついている(自分達の信じる正義を支持しないお前等は、俺の敵、と言う対立を深めるだけのメッセージをばら撒くよりも、そんな対立を生み出すオカしいシステムを、どうにかしなきゃだろ?とかね。)と思うので、誰か日本語訳つけてくれませんかね。
も一つ余談ですが、最近DJバルボサという、ラジオパーソナリティ(?)にハマっていて、彼のミックスの仕方を聞いていると、ミクシングって、自由連想と似ている、と感じます。
「付いてこれるかい?この俺に。」
って感じで。
ミックスは、リズムとか、サウンドで何か共通項のある曲をどんどん被せていくので、曲と曲の繋ぎ目で、次に何が来るか大体予想が付くのですが、それが、もう、
「あー、これこれ!!!聴きたい気分が盛り上がってたんやー!」
ってな感じに、グッとくる繋ぎで、
「絶対この曲しかない!」
って選曲してきたり、時々、
「えっ?それでキたんかい?」
って言う驚きが混ざったり、そのバランスが凄くイケてると感じられるDJは、なかなかいません(個人的好みもあるのでしょうが)。
今私の中でホットなラテン系DJ ロイ・バルボサ、このステーションで、
DJ Roy Barboza - HOT 96.9 Boston
現在アメリカ夏時間中は、日本時間、22:00-7:00
(もう冬時間なので23-8時までですね。)
月曜日から金曜日までヒップなミックスを提供しておられます。
しかし、DJで、この9時間ぶっ続け労働(流石にちょくちょく休憩しているようですが)って、どうなの?
日本のラジオ局ではありえないと思うのですが、アメリカのラジオパーソナリティは、
「サラリーマンかい?」
というくらい、朝から晩までくっちゃべってる人も多いです。
アメリカ人ならば、皆が家族と一緒にご飯を食べる感謝祭当日(日本で言うならば、盆、暮れ、正月クラスの祝日です)でも、一日中頑張って
「すろーばっく(throwback; 昔を懐かしむ音楽を流しまくるって感じ?)」
しておられた様です。
アメリカのラジオ局はブラック企業か…
だから、クウォー!キター!って、当たりの日もあれば、んー、イマイチ、な日もあります(商業ベースでプロモーション中の新しい曲が沢山入るセグメントとかね)。
そりゃ、週休二日とはいえ、年中毎日朝から晩までやってたら、疲れるでしょうし。
あ、でも、日本では聴けなかったりして…