精神分析のススメ

1970年代のNYCで一世を風靡したヒップな精神分析の啓蒙をめざす狂気専門家のブログです。

【若草物語】の作者、ルイーザ・メイ・オルコットの家に行ってきた

先日

日本からの客人の要望で

ルイーザ・メイ・オルコットの家に行ってきた。

 

こんなトコです。

http://tabiisara.com/column/sightseeing/North_America/United_States/59_450464_1480011259.html

 

意外と楽しかったので

書いてみる。

 

「意外と」

というのは

 

① 

米文学の造詣も深くなく

若草物語」とて

四人姉妹のピアノを弾く女の子が死ぬ話

という極めて曖昧な印象しかない

 

② 

アメリカが誇る文豪

オルコットやエマーソンの名前も

聞いたことがある

くらいで何も知らないに等しい

 

そんな私でも「楽しめた」のが

意外だったので

備忘録的に書いてみる。

 

マサチューセッツ州コンコードにある

オーチャードハウスは

若草物語」の舞台とされている。

 

ルイーザ・メイ・オルコットが

若草物語」を執筆したという机も残っているが

ルイーザが子供の頃住んだ家

というワケではないらしい。

 

ルイーザの父母は

福祉精神に満ちた

今で言うところの

「意識高い系」な親だったらしい。

 

父は建国直後のアメリカ合衆国

公共教育の必要性を謳い

ボストンで

ハーバード大学教授のご子息が通うような

ハイソな小学校(?)を運営するも

黒人を受け入れようとする

人権意識の高さが故

意識高くないカネ持ち白人の顰蹙かって

破産(?)したりして

精神的にも不安定だったりして

引っ越しを繰り返したそうだ。

 

母は由緒正しいお金持ちの令嬢だったが

社会福祉の信念崇高な為

清貧を厭わず*1

奴隷制度の廃止と男女平等の理念を

幼いルイーザに説いたという。

 

オーチャードハウス(果樹園の家)

という名前の

りんごの木に囲まれた

可愛らしい家である。

 

ルイーザが両親と共に

26−45歳までを過ごした家だそうだ。

 

日曜日の午前中に行ったら

日本人のグループが居て

一緒にツアーに加わるのかと思いきや…

 

窓から中を覗いただけで

去って行った…

 

家の中は

お一人様$10のツアーに参加しなければ

見られない。

 

かなり濃い内容で

がっつり英語が分からないと

つまらんのでは…

と思ったが

日本在住民的には

なんかよく分からんかったけど楽しかったヽ(^o^)丿

と言って悦んでた

 

ので

 

中を見たい

と思うならゆっくり時間をとって

行くとよい。

 

ツアーは45分程だが

混んでいると

次に始まるツアーに参加できず

1時間近く待つことになるかもしれない。

 

入り口のギフトショップで

お金を払うと

ツアー開始時間を書いた

札を渡された。

 

ギフトショップには

キッチンタオルや

子供のおもちゃ的な

小物類と

年齢に応じて(?)

様々な注釈や前書きのついた

色々なヴァージョンの「若草物語」が並んでいた。

 

英語では

Little women

という題名らしい。

 

日本語では

若草物語」と情趣深い題名が

何故こんな女性蔑視みたいな題名なん?

と素朴な疑問を

ツアーの札を渡してくれた

売店の女性に投げかけてみた。

 

彼女曰く

若草物語」は雑誌だか新聞だかの

連載が好評を博したので

出版が決まったが

ルイーザ自身は題名を決めていなかったそうだ。

 

大人の真似をする

ませた男児を今でも

Little man とか Young man

という云うように

当時大人びた女児を

Little woman

と呼ぶことが流行っていたので

編集者が半ば強引に決めてしまった

ということらしい。

 

売店の彼女は

その説明では編集の横暴さを

物語るには足りない

とでも思ったのか…

 

若草物語の好評に応えて

続編を書くようにと

出版社に請われた

ルイーザは当初

「女性の幸せは結婚」的な価値観を否定し

(自分がモデルの)ジョーを主人公にした続編では

ジョーを独身貴族(?)として描く予定にしていた。

 

ところが編集に

どうしても結婚させてくれ

と懇願されて

初恋(?)相手の若い男の子をふって

父親をモデルとした

年上の男性と結婚させるストーリーにすることで

妥協したのだ。

とアツく語ってくれた。

 

エマーソンやソローといった*2

アメリカのロマン主義の文豪と

親交を重ね

敬愛の念を抱いていた

彼女にとって

同世代の男性は

物足りなかったのだろう。*3

 

そうこうするうちに

ツアーの時間が来た。

 

若草物語の舞台となった家の模型(?)のある

小さな部屋に通され

15分程のドキュメンタリー(?)を

見せられる。

 

館長のおばちゃんが

ルイーザ・メイ・オルコットに扮してイロイロとお話してくれる

ビデオだったが…

いかんせん素人臭い演技で

ルイーザの偉業を語る度に

女性は教育を受ける機会がなかったのに・・・

フェミニストの怨念が噴出するのが

はっきり言ってウザかった。

 

女に生まれた

というだけで

勉強したいのに学校に通わせてもらえない

という事は不当だとは思うし

学校教育を受けなかった

ルイーザが不滅のベストセラーを執筆し

家族を養った

というのは並大抵ではない

とは思うが…

ことあるごとに「不公平」感を醸し出されるのも

げんなりする。(私の認知の歪みを反映する個人的な感想です

 

ツアーはギフトショップの奥にある

台所から始まり、

拙いながらも

初版「若草物語」の挿絵を描いた

アビゲイルの作品(絵画だけでなく彫刻もあった…気がする

ルイーザが使っていた寝室

両親の寝室

アビゲイルの部屋

夫を失った姉と彼女の子供達が暮らした部屋

等を閲覧しながら

オルコット家の歴史や

友人とのエピソードが

披露された。

 

印象に残ったのは

(記憶を辿って書くので正確さは保証できないが

オルコットという氏は元は

オル コックス(雄鶏)だったので

家紋に雄鶏が入っている

という話や

 

若草物語」では

戦争に行ったのは父親だったが

実際はルイーザ自身が

南北戦争従軍看護婦として

戦争を経験していたことや

 

従軍中に病に倒れ

治療薬に含まれていた水銀中毒のため

後々後遺症に悩まされ

日常生活を送ることが

困難だったこと

 

若草物語」の印税で

パリ留学を遂げた妹の

(そーいえば旦那は何をしていたのだろう…)

アビゲイル

黒人女性の肖像画で賞を獲得し

画家としてのキャリアが開けたものの

受賞の1年後に

産後の肥立ちが悪く

生まれたばかりの娘を遺して

非業の死を遂げたこと

 

アビゲイル亡き後

まだ1歳にもならない姪を養子に迎え

父親の啓蒙活動と

母親の福祉活動を金銭的に支える為に

執筆活動を続けたルイーザは

印税が自分の死後も家族に入るように*4

姉の息子達を養子にしたり

鉄道事業に投資する

極めて現実的な

金銭感覚を持ち合わせていたこと

 

オルコット家の奴隷制度廃止と

男女平等の倫理感の根底には

ルイーザの大伯父(?)が

悪名高いセーラム魔女裁判に携わった牧師であったことや

オーチャードハウスの隣の丘には

インディアンが囲い込まれており

白人の彼らに対する

非人道的な扱いを目の当たりにすることで

培われた(というのも変か…?)こと

等…(他にもコンコード出身の彫刻家との親交とか色々な話があったが…

 

あと、本棚に日本語の若草物語関連の本が何冊もあったw

ことくらいかな…

 

あ、ブッシュ元大統領*5

婦人バーバラのおかげで

家の修復や保存ができた

というのもちょっと意外で面白い豆知識だった。

 

アメリカ文学や建国史に興味のある人は

ボストンに来ることがあったら寄ってみると

楽しいと思う。

 

オーチャードハウスの後は

徒歩10−15分くらい

コンコードの街にある

コロニアルインという

アメリカ建国の戦に斃れた兵士の

幽霊が出るというウワサの

由緒正しい旅館で

https://www.concordscolonialinn.com/

ホワイトシチュー仕立てのクラムチャウダー

頂くのがオススメです。

 

夕方なら生演奏もある(かもしれない)奥のパブで

地ビール等を頂くのもイイ感じです。

*1:まあ、そーゆー人だから

こんな旦那を選んだのだろうが…

Wiki様曰く

https://en.wikipedia.org/wiki/Louisa_May_Alcott

金銭感覚もなく

メンタル不安定な夫に不満を抱えていた

という記述もあった

*2:ツアーガイドさん曰く

彼女の日記には

「エマーソン氏が部屋に居ると

明るい空気が充満する」

とか

「ソロー氏と散歩したら

やおら地面を指差して

『何が見える?』

と訊かれた。

何が何だか分からなかったが

美しい蜘蛛の巣がそこにある

と教えられた。

繊細で優しい人だ」

みたいな記述があるそうだ

エマーソンはバイセクシュアルで

男女共にモテモテだったらしいが

父親に近い年齢で

オルコット家がコンコードに住む頃には

既に妻子持ちだったし

一周り以上歳上のソローは

独身を貫いたが

ゲイだったのでは…というウワサなので

https://en.wikipedia.org/wiki/Henry_David_Thoreau

恋愛対象にはならなかったのだろう

*3:てか、男の子になりたい

ジョーの心の闇を描き

病を理由に縁談を断り

独身を貫いたルイーザは

ゲイだったというウワサもある

https://www.vanityfair.com/hollywood/2018/05/little-women-pbs-jo-march-louisa-may-alcott-winona-ryder-maya-hawke

*4:息子が居ないと

印税が遺族に入らないシステムだったらしい

*5:ボンクラ息子じゃない方