【100日後に死ぬワニ】父の不在は喪われた理想と倫理観
100日間更新し続け
クライマックスを迎えたワニが
炎上してるらしい。
https://news.yahoo.co.jp/byline/usuimafumi/20200322-00169126/
連載中も全くワケが分からんかったが
最終話の難解さが特にイケてると思った。
ので今更…
という気もしないでもないが
ワニの何が
日本のワカモノの心に訴えかけたのか
について考察してみたい。
このまとめに
https://togetter.com/li/1483686
100日目のお話と一緒に作者の経歴があった。
…
成る程
そーゆーことだったのかー
と思ったので見に行ってみた。
https://studio-kikuchi.com/about/
このサイトできくち氏が描くモノは
ワニのほのぼの感とは
全く違う印象で
…
何となく
…
ちびまる子ちゃんで人気を博した
さくらももこ氏の
ほのぼのと
永沢君で描かれるおドロの
2面性を思い出した。
ワニがウケていた最大の理由は
いつかは終わってしまう
「何気ない日常の幸せ」
を描いていたからだろう。
それは
「何気ない日常のお笑い」
にも通じるモノがあると思う。
何気ない日常は
「不安」や「失望」「不満」
が一杯だ。
ワニもまる子ちゃんも
「残酷で理不尽な現実」
を淡々と受け止めることで
日常にささやかなヨロコビを見出し
如何に世界を「美しい」モノとして享受できるか
という
「優しい」日本人の
怒りや暴力的衝動への「防衛」でもあり
破壊的欲動の「昇華」でもある
言うなれば
「倫理観」を描いている
と私は感じる。
最終回のワニが死んで散る桜の画や
無防備なひよこに突っ込む車に
桜を観る会や
赤木氏の自殺で露呈する
パワハラ官僚と公文書改竄の闇
フレンチに遅れそうだから…
と暴走したプリウスの老人
スキャンダルにもなった
ノーパンしゃぶしゃぶ接待を受けるも
潤沢な退職金を貰って引退し
莫大な不動産賃貸収入があるにも関わらず
結婚できない娘を自殺に追いやり
ニートな息子を殺す親達
…
国を操る力を持つが故
「法」の下に*1
裁かれることのない犯罪者達を
想起したのは
私だけだろうか。
父子喧嘩に心を痛める
優しいワニは
みかんを送ってくれる
母の居る故郷には帰らない。
時給千円のバイトで疲れた躰で
帰省ラッシュに揉まれるくらいなら
年末年始も
友達と楽しみを分かち合う方が
ラクだからかもしれない。
カフェが閉まった後の掃除を終えて
やり遂げた感を愉しむ間もなく
ゴミ出しを言いつける
マスターに
ワニは怒りをぶつけない。
マスターも又
薄給で身をすり減らしている
ということを知っているからだろうか。
バイトの掛け持ちで忙しい先輩に思いを寄せるも
告白できないワニ
時給千円でも
980円のラーメンが楽しみで
非常時への蓄えの肉を
暴食してしまう
けど
楽しみにしている雲布団を
転売屋から買って
散財することなく
1年待つワニは
小さな善行をつみ
日常に愉しみとヨロコビを見出そうと
毎日を過ごす
が
人生の目的は見いだせない。
心が健全なモノは
働くことと愛することにヨロコビを見出す
と言ったというウワサだ。
ワニは
「やりたいこと」を見出せず
「愛」することにも臆病な
日本のワカモノの
純朴で善良ながらも
幼稚な自我だ。
バイクが大好きなネズミや
バイト先でさくっと彼女をつくって
別にやりたいことがアルわけでもないから…
とスーツを着てあっさり就職して
欲しくもない布団を貰う(買わされる?)モグラ
トラックから助けて
家を作ってやったひよこですら
…
皆どんどんオトナになるのに
自分はいつまでも夢を追いかける「少年」のまま
車に轢かれて
「終わり」を迎えるワニ。
ワニのお話には
息子を護る
理想の「父」は描かれない。
作ったみかんを送ってくれる
遠くに住む「母」と
日常を分かち合う「ナカマ達」
だけだ。
ワニが100日後に死ぬことを知る
「神の視点」を持つ読者ですら
ワニが
ひよこを守って
命を落としたのか
ネズミのメールに気を取られて
車に轢かれてしまったのか
確信はできない。
漫画では描かれない
暴走車を運転するモノの目には
ワニは
スマホに気を取られて
信号無視する
夜中に大声でバカ話をして
公共の迷惑を省みない
無責任で結婚もしなければ
就職もできない
生きる価値もない
バカ息子なのかもしれない。
私には
ワニがこんなにバズって
炎上したのは
「今」の
日本の子どもたちの
「やりたいことでカネ儲けしたい」
という自己実現の希求と
そんな「ワガママ」は許されない
自己犠牲なくして
生きる価値はない
という「旧い父」の価値観の
軋轢が故では
と思われてならない。