精神分析のススメ

1970年代のNYCで一世を風靡したヒップな精神分析の啓蒙をめざす狂気専門家のブログです。

【グレタ・トゥーンベリ】のスピーチが何故刺さるのか その2

前回の記事に

https://neofreudian.hatenablog.com/entry/2019/09/26/192402?_ga=2.195537132.1526817281.1570379473-699501326.1533073212

ももはなさんから10点を頂き

いくらなんでも

これでは落第だよな…

となったので

リベンジします

 

グレタちゃんに対する反発が

ガンガンでて

世界中で炎上してましたね

 

多くの人が彼女に対して抱く

「憎悪」や「恐怖」について

前回は

エディプス期の

父殺しの不安を喚起するモノへの

「恐怖」を

「排除」する衝動

という視点で書きましたが…

 

今回は

求めてやまないモノ(=乳)を破壊する

クライン女史曰く

「最も原初的かつ破壊的な衝動」

である「羨望」に注目してみたい

と思います

 

とりあえず

20点くらいは頂きたいモノだ…

というユルイ意気込みで

書いてます…

 

彼女に対する批判(?)に

 

私達貧乏人は

カネがない切迫感に煽られているんだ

 

生態系の崩壊なんて

気にしてらんねーよ

 

 

というモノがあります

それを端的に表す

「カネ持ちのクソガキ」

というパワーワードがありました

 

 

相変わらず元ツイだけを引用するのが

面倒なので私のリプ付きですが…

 

「カネ持ち」自分も欲しくてたまらないカネを持っている

「クソガキ」感情的に怒りをぶちまけても

みんながちゃんと言うこと聞いてくれる

(甘やかしてくれる)

 

彼女が羨ましい

という

理性や自省心、倫理感といった

フィルターを全くを介さない

原初的過程を率直に表した

誠にパワフルなツイだと思います

 

しかしこの感傷(Sentiment)は*1

ちょっと考えてみると

めちゃくちゃ理不尽です

 

後のやり取りで

ツイ主さんも認めておられますが

「弱者が強者に抱くルサンチマン(怨念)」

は不毛でしかありませんからね

 

環境破壊によって起きる

天変地異や食糧難で

再起不能な打撃を受けるのは

常に「持てないモノ達」です

 

彼女が国連のスピーチで

告発したのは

カネのためには環境汚染も

非人道的な搾取も厭わない

倫理なき国際企業と

それらに癒着する

貪欲な政治家です

 

彼等を無邪気に支持する

オトナ達の未成熟さや愚鈍さ

を非難するモノでもあるので…

そこに反応する人達が多いのでしょうが

 

化石燃料による

二酸化炭素排出がヤバイと

国際的に顰蹙を買っている

オーストラリアのトップの

彼女に対する批判的な反応は*2

貪欲な国家の主として*3

扱い難い年頃の娘の「父」として

まあ、防衛的(Defensive)になるのも

(心情的には)分かりますが*4

 

紙やプラスチックの食器を

ガンガン使い捨てな

欧米に比べて

環境に優しい日本人の

しかもカネも権力もない

平民がSNS

こんなに彼女に反発しているのは

改めて興味深い現象だと

私は思います

 

精神分析的に云うと

「客観的に観て

コワがる理由が全くないモノに対して

あたかも自分が攻撃されているかのように憤り

攻撃的になる」

迫害妄想の根底には

「自らの破壊性に慄く脆弱な自我」

があります

 

クライン女史は

自我を恐怖に陥れる「原初的な衝動」とは

愛するモノを食い尽くす「貪欲」と

愛するモノを破壊する「羨望」

だと云います

 

自我に害悪をもたらすモノを排除する「憎悪」は

自我を護る

という「理屈」にかないます

 

悪いモノがコワイ

「認知の歪み」は

他者と共有する「現実認識能力」を破壊する

「分かり易い」

迫害妄想の根源で

まだまだ「狂気」としては

序の口です

 

自分が(自分に)「充足」できない

憤り(Frustration)から

求めてやまない

自我に必要な「良いモノ」を

破壊する衝動と

それに伴う自我の「荒廃」

すなわち「思考力の崩壊」こそが

「狂気」の真骨頂です

 

話が逸れそうなので

「カネ持ちのクソガキ」

如実に現れる「羨望」に話を戻します

 

原初的な「羨望」は

母の「乳」に抱くモノです

 

乳児に安心感、充足感、高揚感、多幸感

をもたらす素晴らしい「乳」

 

乳児が「乳」を「羨望」するとは

「狂気」の沙汰ですが…

 

素晴らしい「乳」が

思うがままにならないモノ

であるならば

例えソレが

自分の口の中にあって

自分の一部であろうとも

多幸感に浸れない

自分のモノとして

「同一化」できないならば

自分にとって必要な「乳」であれ

壊してしまえ

 

という救いようのない破壊性を

「羨望」と云います

 

男が妻の浮気に怒り

相手の男を殺すのは

エディプス葛藤の*5

「嫉妬」ですが

妻を殺してしまうのが

「羨望」と云えましょう*6

 

 

またまた話が逸れてしまったので

「カネ持ちのクソガキ」に戻ります

 

カネも

(外国語で)自己主張する言語能力も

国連のステージに立ち

世界中の人達の注目を一身にあつめられる機会も

持たなかった子供時代を送った人には

 

怒りを露わにし

好きなことを云い

学校をサボって好きなことができる

自分には与えられなかった

自由や子供時代を手にする

グレタちゃんは

「羨望」の対象です

 

本当は自分も

怒りを露わに

思ったことを云い

やりたいことをしたいのに

我慢を強いられた人は

自の「自由」を剥奪する

抑圧者と同一化して

理想の自分を破壊します

 

日本人、我慢しすぎで

どんどん自分達を

我慢できない状態に追い込んでる

ヤバイ連鎖にハマってる

と常々思います

*1:ツイ主さんは「ルサンチマン

という言葉を使われました

日本人の文学的表現の豊かさには

脱帽です

仏語や羅語の引用大好き

インテリアメリカンでも

Ressentiment

は中々でてこない

*2:https://www.theguardian.com/australia-news/2019/sep/25/morrison-responds-to-greta-thunberg-speech-by-warning-children-against-needless-climate-anxiety

*3:豪首相のモリソンには

2人の娘さんが居るそうで…

*4:だからといって

彼の態度が批判された

国家の元主の取るべきモノだとは

決して思えませんが

*5:パパいらない

僕、ママと結婚する

ってアレです

*6:めちゃくちゃ雑です

実際には

「羨望」に限らず

もっと広範で複雑な母(=女)に対する

「憎悪」があります