精神分析のススメ

1970年代のNYCで一世を風靡したヒップな精神分析の啓蒙をめざす狂気専門家のブログです。

【ダルちゃん】 擬態 と 自己愛の欠如

 昨日、この方の、この記事の、ここを読んで、

11月29日の話 - さよならドルバッキー

〇もやっとしたのが資生堂のダルちゃん。ダルちゃんは発達障害のメタファーかなんていうのもあったけど、多分違ってて異様に自己肯定感の低い人なんだと思う。ダルダルな自分を愛せないから、普通に生活していくことを「擬態」なんて思ってしまう。それにみんな一皮むけばダルダルなんだからダルダルを隠していることに嫌悪感を持つ必要なんてない。もしダルダルであることを攻撃してくる人間がいるとするなら、それは同じダルちゃんと同じダルダル星人が「私も必死で擬態しているのにあなただけズルい!」ってことなんだと思う。サトウさんはそんなダルちゃんに「擬態する必要はない」って言う立場なんだろうとは思うけど……。

 

(当時)資生堂のサイトで連載されていたダルちゃん第9話を読んで、

まとめのコメント読んで、

ドルバッキーさん同様、

「ちょっと流行ってるからって

何でもかんでもADD(注意欠陥障害)

にするんじゃねー!」

と、思ったので書きます!

 

基本的には、ドルさんの、

ダルちゃんは

「異様に自己肯定感の低い人」

に同意します

…が、

その異様に低い自己肯定感が

如何に育まれてしまったか、

という点に注目して、

ウィニコットの「偽りの自分」と、

コフートの「自己対象の欠如」

の概念を紹介させて頂きます。

 

コフートについては、この記事でも

【性依存症】 カエデさん その5.依存からの脱却 充足と共感 - 精神分析のススメ

さくっと触れました。

が、今読んでびっくり。酷い(笑)。

ちゃんと説明しているサイトさんに

思いっきり丸投げしました。

笑っている場合ではないので、

今回は、もーちょっと、気合い入れます。

 

アメリカが誇る精神分析の大家

ハインツ・コフートについて

好き勝手な事言うと

「まーた、お前は何も分かっておらんのか!」

と、怒られるので、

文句言われる事のない

日本語で好き勝手に書いてます

 

小難しいので

以下、がっつり、私的解釈です。

 

当ブログ初心者様には

使用上の御注意をどうぞ。

 

neofreudian.hatenablog.com

 

 

コフート先生は、

自己愛専門の精神分析家 

感情の混乱が激しくストレスに脆弱な

パーソナリティ障害B群の*1

自己愛性の病理と治療法

確立した大先生です。

 

自分を卑下し、他者を立てる謙遜が

美徳な日本人にとっては、

自己愛というと

傲慢とか

自己チューとか

他者と相容れない

等、悪い印象を持たれる方も

多いかもしれません

 

 

コフート先生曰く、

自分を愛する事は、

「健全」な自我にとって必要不可欠です

 

とかくセルフエスティーム

(自己肯定感‥.?かな?)を重んじ、

常に

「自分はスゴい!」

と自己顕示欲の強い

いかにもアメリカンな考え方ですね。

 

自分を受け入れて「大好き」になれないと、

他人を受け入れたり「愛」したりできません

ってことでもあります

 

フロイト教授的には

本能(性欲)vs 罪悪感(社会性)の狭間で

人間は精神を病む

= 自分は(ママと)ヤリたいけど、

(パパのせいで)できない

という、*2

能動的な自我の欲望に対する社会的抑圧

神経症の原点でしたが、

コフートは、

愛されないと、人間は病む

= 素直に自分をさらけ出してしまうと、

誰も(ママも、パパも、兄弟友達さえも)

僕ちゃんのことを愛してくれない

という、

日本人的には至極全うな

受動的な自我の欲望にまつわる葛藤

について論じました。

 

が為、

フロイトの娘のアンナに

裏切り者呼ばわりされてしまったそうです。

 

フロイト派(ヨーロッパ)の皆さんに

受け入れられようと、

遥か大西洋の向こう側で邁進されていた

コフート先生にとっては、

ショックだったらしい

 

可哀想に…

 

というのはさておき、

 

自己愛性のパーソナリティー障害の特徴は、

一見、魅力的ではありますが

虚栄心や自己欺瞞

承認欲求が強く

他者をコントロールしようとする

DV男、というのが典型例です。*3

 

が、コフートは、そんな

自信に満ち溢れ

魅力的でありながら

傲慢で鼻持ちならない側面もある彼等が

愛情に飢え、自己否定感に苛まれる哀れな存在である、

と分析しました。

 

本当の自分を理解されない事に憤り、絶望する彼等には、

ナルシシスティック サプライ

(直訳すると、自己愛の供給源 とか?

承認欲求を充たすモノと言っても良いかもしれません)

を与える、自己対象(自分の一部として取り込める他者)

が欠けている

みたいなことをおっしゃいました。*4

 

自己対象には、

以下の3種類があります。

 

1. 鏡(Mirroring Object)

自分が褒めて欲しい所を認めて褒めてくれる、

(必要なモノ=愛情 を与えてくれる)

母親的モノ(対象)

 

2. 理想化(Idealized Object)

自分が崇め奉れる、

何でもできる(守り、導いてくれる)

父親的モノ

 

3.双子(Twin Object)

自分と同じなのだ、

と感じることができる

(喜怒哀楽を共に分かち合える)

友達的モノ

 

ダルちゃんには、

「本当の自分」を認めて、

「そのままのあなたで、大丈夫」

と感じさせてくれる、

母も、父も、友達もいません。*5

 

「誰も素の自分なんか分かってくれない」

という怒りを表現できる人は、

所謂、自己愛性の障害である、

DV男や、モンスターママみたいになります。

が、怒りを感じ、表現すると、

見捨てられてしまう、

生きて行けない、

という恐怖にオノノク人は、

とりあえず「偽の自分」で、

カスカスの(偽の)容認や、

理想や、共感で、その場をしのぎます

 

カスカスのサプライ(供給)なので、

全く満足出来ません。

無気力になります。

栄養失調みたいなものですからね。

 

こうして、

自己愛の不足がダルちゃんを生み出します*6

 

とても説得力ある人物描写で、

ドキドキします。

ダルちゃんが、如何に

「本当の自分」を回復できるのか

それともどんどん自分を追い詰めるのか…

とても気になります。

 

という事で、牛乳石鹸さんも、

牛乳石鹸と、父親不在 - 精神分析のススメ

資生堂さんも、

モヤモヤしちゃう現代人の病みをついてくる

プロモーションのかけ方

尖っているなー

と 感心します。

 

11話まで読んだ感想も、書きました。どんどんハマってます。

【資生堂のダルちゃん】トラウマ と デートレイプ - 精神分析のススメ

 

31話の感想です。

【ダルちゃん】 愛し 愛される幸せの 奇跡 - 精神分析のススメ

 

余談です。

実は、私が初めてはてなに出会ったのは、この方のこの記事でした。

Twitterのメンヘラ神が死んだ件について思ったこと - まつたけのブログ

メンヘラについて、調べていて。

それで、この記事読んで、スゴいと思ってズルズルと、ブログの世界に引き込まれてしまいました。

人生の9割が親で決まるんだったら僕は今すぐ自殺する - まつたけのブログ

 

お元気でおられるのでしょうか。遠くからですが、応援してます。

どえらい間違いも

しでかしたし

手直しちょこちょこ入れるとは思いますが

いつもながら

ワケの分からん話にお付き合い下さり

誠にありがとうございました。

 

*1:因みに、古典的(?)メンヘラとも言える境界例もパ障B群です

*2:ママとパパは、あくまで象徴です。

ガチにとられると

性的虐待のトラウマ=大変クレイジー

なことになってしまいます

*3:この記事で書いた

neofreudian.hatenablog.com

炎上主の様に女性でも沢山おられますけどね。

*4:コフート先生の文章は

スーパー難解なので

完全に私の「意訳」です

*5:因みに「本当の自分」

「偽りの自分」は、

ウィニコットの概念です。

子供の「素の自分」に

無関心で反応を見せない母親は、

自分の子供に対する期待や要望で、

子供の「本当の自分」を歪め

「生きている実感」すら損なわせる。

結果、他人の反応や期待にしか応じられない

「偽りの自分」が子供に形成される。

という、正にダルちゃんに象徴される、

多くの日本人の闇を描写しています。

*6:厳密にはコフートの言う自己対象、

及び自己愛の不足は、

ニンフォマニアのカエデさんの記事

【性依存症】 カエデさん その2.メンヘラと自慰力の欠如 - 精神分析のススメ

【性依存症】 カエデさん その3.不安と性欲の混同 - 精神分析のススメ

にも書いた、

自慰力の欠如→自我の崩壊、に繋がります。

が、パーソナリティ障害には、

無気力、イライラ等、気分障害の症状がつきもの。

自己愛不足=無気力

なんてのも、アリかなー。

なんて。てへ。

厳密にはウィニコット様に

言及するべきでした。

コフートはスーパー難解なのに、

野心が燃えすぎたな、

と反省致しております。