精神分析のススメ

海外在住メンヘル専門家。ヒップな精神分析をめざしております。

【資生堂のダルちゃん】 擬態 と 自己愛の欠如

10年近く使っていた dell がいきなり死んで、使い慣れない瀕死の Mac に頼らざるを得ない状況になり、更新が滞っております。

昨日、この方の、この記事の、ここを読んで、

11月29日の話 - さよならドルバッキー

〇もやっとしたのが資生堂のダルちゃん。ダルちゃんは発達障害のメタファーかなんていうのもあったけど、多分違ってて異様に自己肯定感の低い人なんだと思う。ダルダルな自分を愛せないから、普通に生活していくことを「擬態」なんて思ってしまう。それにみんな一皮むけばダルダルなんだからダルダルを隠していることに嫌悪感を持つ必要なんてない。もしダルダルであることを攻撃してくる人間がいるとするなら、それは同じダルちゃんと同じダルダル星人が「私も必死で擬態しているのにあなただけズルい!」ってことなんだと思う。サトウさんはそんなダルちゃんに「擬態する必要はない」って言う立場なんだろうとは思うけど……。

 

ダルちゃん読んで、

「ダルちゃん」第9話 | ダルちゃん | 花椿 HANATSUBAKI | 資生堂

まとめのコメント読んで、

ADHDは違うっしょー?!」

と、思ったので書きます!

ウィニコットの「偽りの自分」に、コフートの「自己対象の欠如」の概念を重ねてみました。

 

コフートについては、この記事でも

【性依存症】 カエデさん その5.依存からの脱却 充足と共感 - 精神分析のススメ

さくっと触れました。

が、今読んでびっくり。酷いですね(笑)。

真面目に説明しているサイトさんに、思いっきり丸投げしました。

笑っている場合ではないので、今回は、もーちょっと、気合い入れます。

 

ハインツ・コフートは、アメリカが誇る、精神分析の大家で、好き勝手な事言うと、

「まーた、お前は何も分かってないなー」

と、怒り出す先生方がおられたので、文句言われる事のない日本語で書いても気がひけるんですよねー。

 

小難しいので、以下、がっつり、私的解釈ですが、本題に入ります。

 

コフートは、自己愛専門の精神分析家、と言っても良いでしょう。

古典的(?)メンヘラの境界例と同じく、「感情の混乱が激しくストレスに脆弱な」パーソナリティ障害B群の、自己愛性の病理と治療法を確立した大先生です。

自分を卑下し、他者を立てる、謙遜が美徳な日本人にとっては、自己愛、というと、自己チューとか、他者を愛さない、とか、悪い印象を持たれる方も多いのではないでしょうか。

コフート先生曰く、

「自分を愛する事は、精神的に健全である為は必要」

という、とかくセルフエスティーム(自己肯定感?かな?)を重んじ、

「自分はスゴい!」

という自己顕示欲の強いアメリカンにはしっくりくる事を言ってくれてます。

 

とりあえず、自分を受け入れて、大好きになれないと、他人を受け入れたり、愛したりできませんよ。

ってことなんですけどね。

 

フロイトの主張は、本能(性欲)と、罪悪感(社会性)の狭間で人間は精神を病む

= 自分は(ママと)ヤリたいけど、(パパのせいで)できない

という、(ママとパパって象徴が、ガチになると大変クレイジーなことになってしまう)能動的な自我の欲望しか許されないものでしたが、

コフートは、

愛されないことで、人間は病む

= 素直に自分をさらけ出してしまうと、誰も(ママも、パパも、兄弟友達さえも)僕ちゃんのことを愛さない

という、至極全うに受動的な自我の欲望に触れた為、フロイトの娘のアンナに裏切り者呼ばわりされてしまったそうです。

 

フロイト派(ヨーロッパ)の皆さんに受け入れられようと、遥かアメリカで邁進されていたコフート先生にとっては、さぞかしショックだったことでしょう。

というのはさておき、 

 

自己愛性のパーソナリティー障害は、一見、魅力的でもありますが、虚栄心による自己欺瞞や、承認欲求が強く、他者をコントロールしようとする、DV男、というのが典型例です。

が、コフートは、そんな彼等が愛情に飢え、自己否定の強い哀れな存在である、と分析します。

本当の自分を理解されない事に憤り、絶望する彼等には、ナルシシスティック サプライ(直訳すると、自己愛の供給源 とか?承認欲求を充たすモノと言っても良いかもしれません)を与える、自己対象(自分の一部として取り込める他者)が欠けている、とも。

自己対象には、以下の3種類があります。

1. 鏡

自分が褒めて欲しい所を認めて褒めてくれる、(必要なモノ=愛情 を与えてくれる)母親的モノ(対象)

2. 理想化

自分が崇め奉れる、何でもできる(守り、導いてくれる)父親的モノ

3.双子

自分と同じなのだ、と感じることができる(喜怒哀楽を共に分かち合える)友達的モノ

 

ダルちゃんには、「本当の自分」を認めて、

「そのままのあなたで、大丈夫」

と感じさせてくれる、母も、父も、友達もいません。*1

 

「誰も素の自分なんか分かってくれない」

という怒りを表現できる人は、所謂、自己愛性の障害である、DV男や、モンスターママみたいになります。

が、怒りを感じ、表現しては、見捨てられてしまう、生きて行けない、という恐怖にオノノク人は、とりあえず「偽の自分」で、カスカスの(偽の)容認や、理想や、共感で、その場をしのぎます

 

カスカスのサプライ(供給)なので、全く満足出来ません。

無気力になります。

栄養失調みたいなものですからね。

 

こうして、自己愛の不足がダルちゃんを生み出します*2

 

とても説得力ある人物描写で、ドキドキします。ダルちゃんが、如何に「本当の自分」を回復できるのか(それともどんどん自分を追い詰めるのか)、とても気になります。

 

という事で、牛乳石けんも、資生堂も、モヤモヤしちゃう現代人の病みをついてくるプロモーションのかけ方、尖っているなー、と 感心します。

 

11話まで読んだ感想も、書きました。どんどんハマってます。

【資生堂のダルちゃん】トラウマ と デートレイプ - 精神分析のススメ

 

余談です。

実は、私が初めてはてなに出会ったのは、この方のこの記事でした。

Twitterのメンヘラ神が死んだ件について思ったこと - まつたけのブログ

メンヘラについて、調べていて。

それで、この記事読んで、スゴいと思ってズルズルと、ブログの世界に引き込まれてしまいました。

人生の9割が親で決まるんだったら僕は今すぐ自殺する - まつたけのブログ

 

お元気でおられるのでしょうか。遠くからですが、応援してます。

どえらい間違いもしでかしてしまったし、手直しちょこちょこ入れるとは思いますが、いつもながら、ワケの分からん話にお付き合い下さり、誠にありがとうございました。

 

*1:「本当の自分」「偽りの自分」は、ウィニコットの概念です。子供の「素の自分」に無関心で反応を見せない母親は、自分の子供に対する期待や要望で、子供の「本当の自分」を歪め「生きている実感」すら損なわせる。結果、他人の反応や期待にしか応じられない「偽りの自分」が子供に形成される。という、正にダルちゃんに象徴される、多くの日本人の闇を描写しています。

*2:厳密にはコフートの言う自己対象、及び自己愛の不足は、ニンフォマニアのカエデさんの記事にも書いた、自慰力の欠如、及び自我の崩壊、に繋がります。が、パーソナリティ障害には、無気力、イライラ等、気分障害の症状がつきもの。自己愛不足=無気力も、アリかなー。なんて。てへ。厳密には私の大好きなウィニコットに言及して納めておくべきでした。コフートは私のか弱い頭では理解不可能なので、ちょっと野心が燃えすぎたな、と反省致しております。