軽薄な精神分析 1. The Chainsmokers 大人になれない僕達 現代アメリカの若年層 ミレニアルの闇

書き掛けた記事が、あまりにも重たくて、ポップな事が書きたくなってしまいました。

と、いう訳で、取り立てて好きと言うほどではないのですが、くせになります。アメリカで大流行の、チェーンスモーカーズの歌を2曲紹介します。

まずは、ちょっと古いのですが、クローサー。ここ1年間、お子様ラジオでそれこそ、死ぬほど聞かされました。

digitalcast.jp

歌詞を私訳しました。

[Verse 1: Andrew Taggart]
ねえ、君に会うまではうまくやってたんだよ
ちょっと飲み過ぎかな。アル中なんだ。

けど、僕は大丈夫
ねぇ、友達にあえて嬉しいって言っといてよ
本当はあいつらには二度と会いたくなんかないんだけどね

[Pre-Chorus: Andrew Taggart]
君が傷みを感じてるってこと、分かってるよ
オンボロ車で都会へ出てから
4年、電話もしなかった
今日、ホテルのバーで見かけた君は可愛くって
止められないんだ
我慢なんてできない

[Chorus: Andrew Taggart]
だからベイビー、もっと近くに抱き寄せて
君のレンジローバーの後部座席で

そんな車、自分じゃ買えっこないって知ってるよ

君の肩のタトゥーを噛もう
シーツを角っこからひっぺがして
このマットレス、ボルダーにいた頃、君がルームメイトから拝借したやつだよ
僕達は ちっとも変わらない

 

[Post-Chorus: Andrew Taggart – Instrumental]

あの頃のまま

僕達は 何も変わらない


[Verse 2: Halsey]
あなたは、初めてあったあの時と同じね

今も素敵なまま
何で別れちゃったんだろう、正気じゃなかったのね
ここにいてよ、あのブリンク182の曲をかけて頂戴
ツーソンで死ぬほど聴きまくったやつよ

[Pre-Chorus: Halsey]
あなたが傷みを感じてるってこと、知っているわ
オンボロ車で都会へ出てから
4年、電話もしなかった
今日、ホテルのバーで見る私は綺麗でしょう
止められないわ
我慢なんてできないのよ

(下の2サイトの訳を参考にしました)

fumhum.com

【歌詞和訳】Closer / The Chainsmokers - クローサー / ザ チェインスモーカーズ : 洋楽翻訳☆お味噌味 - オリジナル歌詞和訳の妄想旅行へ

 

そして、今年1月にリリースされた、がっつり薬物依存、BPD(境界性性格障害)な内容のパリス。

digitalcast.jp

僕たちはパリにいたんだ
君の両親から逃げるために
そして思ったんだ
「ああ、今すぐこいつをヘロインに混ぜて注射できたらな
こんなの うまくいくなんて思ってもいないよ」

 

外のテラスに出て

酷いことかもしれないけど
思ったんだ
「僕が他の子と飲んだくれてるのに

君がひとりで堕ちていくのを みすみす傍観するなんて」

 

堕ちるなら 一緒に堕ちよう
みんながきっと言うよ 君は何でもできたのにって
みんながきっと言うよ 僕は賢かったって
堕ちるなら 一緒に堕ちよう
何やったって 大丈夫
見せ付けてやるんだ 僕達の方がスゴイって

 

僕たちはパリにいた
君の両親から逃げるために
君はとても誇らしげだね
タバコを吸って顔をしかめて

自撮りを沢山インターネットに上げて

 

外のテラスに出て
この小さな町の空気を吸ったよね
僕たちだけで ただスリルを求めて授業をサボった
自分たちの過去に酔って

 

僕たちはパリにいた(堕ちるなら)

 

この2つのサイトの訳を参考にしました

【歌詞和訳】Paris/the chainsmokers(ザ・チェインスモーカーズ)|sippin-on-sunshineのブログ

The Chainsmokers – Paris 歌詞を和訳してみた – SONGTREE

 

パリスの方は、最初にアップされたPVがもっとロマンチックで、恋に落ちる、という解釈もありますが、下のサイトのまとめによると、

Paris by The Chainsmokers Songfacts

パリスを歌っているアンドリューが、重篤な薬物依存治療中の幼馴染とFBでやりとりしながら書いた曲、ということでやはり、最近流行りが復活しているというヘロイン依存を念頭において私訳しました。

最後にリンクを貼りましたが、当初、発表されたロマンチックなPVは、ツイートもされたパリスの定義で始まります。

"Paris - A sentimental yearning for a reality that isn't genuine.

2: An irrecoverable condition for fantasy that evokes nostalgia or day dreams."

本当ではない現実への感傷的な憧れ、思慕、追悼

白昼夢や郷愁を幻想させる、決して取り戻せない状況

 

ということで、チェーンスモカーズのFBには、パリスがリリースされた時期にこんな記述があったそうです。

「題名のパリスは、僕達(アメリカ人)にとって、フランスのパリが、異国のロマンチックな都市として理想化されていることを踏まえた比喩で、実在する場所ではないんだ。薬物依存と戦う友達の、みんなが心配しているって分かっていながら、何もかも上手くいっている、って信じたい心理状況、逃げ場所のことなんだ。

パリスは、『楽しいことなんて何もない現実から逃げ出して、どこかで誰かと一緒にいる』っていう幻想のことを歌っているんだよ。」

 

この歌は女性のボーカルが入ることから、彼女とのどっぷりメンヘラな恋愛関係を歌っているようにも受け取られますが、アンドリューの話から、幼馴染の闘病(ヘロインや、アルコールの依存症は心理的、身体的、両方の病気で、全快の可能性は20%以下とも言われています)の経過を、家族や友人から聞きながらも、何も知らない振りをして、「全ては上手くいってるよ。僕は大丈夫」という、友達の強がりに寄り添う内容の歌だった、という、目からうろこな意味が立ち上がってきます。

相互依存のドロドロ自殺願望恋愛歌、として聴くのと、幼馴染の闘病を支える曲、として聴くのでは、趣がガラリと変わりますよね。

とはいえ、虚構に共感するのみでは、精神衛生上決して良い結果には繫がりませんし、お互いの最も暗い幻想を感傷的に分かち合うことで、意図せずとも、最終的な破滅への道を手を取り合って突っ走ってしまうことにも、なりかねません。

ちなみに、アンドリューは、めっちゃ酒飲みで、ニューヨーク州のシラキュース大学出なのですが、少なくとも、30年以上前から綿々と続く評判からしても、シラキュース、歴史的にドラッグやパーティーで有名な大学と言えるでしょう。

そして、ヘロインにハマる人達曰く、ヘロインは、最初の何回かが、えも言われぬ至福感で、最高だそうです。そこからは、はっきり言って、下り坂。正に、堕ちる一方。

それでも止められないのは、その最初の何回かの至福感が忘れられなくて、それを何とかもう一回、と思ってしまうそうです。

取り戻せない幻想に対する郷愁、感傷的な思慕、追悼、という、チェーンスモーカーズのパリスの定義そのものです。

 

クローサーにも、パリスにも共通しているのが、「自分達は何をしても赦される」 というフレーズに集約される、ミレニアルに特徴的な、いわれのない自負心(プライド)の高さと、倫理観の欠如です。

 

他人に良く思われる為には平気で嘘をつく。

友達に会えて嬉しいって言っておいてよ

本当は二度と会いたくないけど

 

自分が無力で、傷ついていることや、他者を傷つけていることを認められない脆弱なエゴ

君が(あなたが)傷みを感じてるって知ってる 

I know it hurts you 無生物主語 it  が使われており、何の為に傷付いたのかが分からない言い方です。英語の口語表現にしては、珍しい。あたかも弁護士のように巧妙な言い回しに加えて、責任逃れな詞が続きます。

なんで別れちゃったんだろう 正気じゃなかったのね

 

薬物に頼り、親に頼る現実から逃避しているのに、そのことが格好良いと思っている。

君の両親から逃げるために
君はとても誇らしげだね
タバコを吸って顔をしかめて

 

親が、すごいすごいと褒めちぎって育てるので、努力もしないで、自分は何でもできると思っている。

みんながきっと言うよ 君は何でもできたのにって
みんながきっと言うよ 僕は賢かったって
堕ちるなら 一緒に堕ちよう
何やったって 大丈夫
見せ付けてやるんだ 僕達の方がスゴイって

 

そこそこ裕福に育ったので、人の物を断りなく貰っても、「新しいの買えばいいじゃん」とばかり、罪悪感がない

このマットレス、ボルダーにいた頃、君がルームメイトから拝借したやつだよ

 

親に金を出してもらったのか、払えないローンを組んだのか、どちらにしても、身分不相応な車に乗る(見せ付けたい)

そんな車、自分じゃ買えっこないって知ってるよ

 

責任感もなく、自分で努力して何かを成し遂げることが出来ないくせに、親の庇護の下、自信だけは満々に育った、アメリカの困ったちゃん世代、ミレニアルの内面に巣食う空虚さや、閉塞感、そこから逃れる為に、表面的な人付き合いや、刹那的な楽しみ、薬物依存で紛らさせる、若者の絶望感を徹底的にロマンチックに描く、歌詞と映像だと思います。

だからこそ、多くの若者の共感を得、ヒットするんでしょうね。

みんながネットでお手軽に「自分こそはみんなよりスゴイ(楽しい)」って、見せ付けられる時代ですから。

 

ちなみに、ロマンチックなパリスの解釈と(私的には退屈な)映像はこちら。

[歌詞和訳] Paris / The Chainsmokers (ザ・チェインスモーカーズ) | 洋楽の歌詞をただひたすら和訳するブログ

そして、ちょっと古いですが、若年層の(たしか)ヘロイン依存のこわーい映画は、

レクイエム・フォー・ドリーム(アマゾンのリンク貼ろうとして出来ませんでした...涙)

がお勧めです。

昔のことでよく覚えていないのですが、同ダーレン・アロノフスキー監督による、

パイ

も、確か、分裂症患者の心境を垣間見ることのできる秀作だったと思います。

あれ?

ポップな記事書きたかったくせに、ずっしり重くてこわーいアメリカの若年層薬物依存の話になってしまったなあ。

うーん。何でだろう。

 

というワケで、リベンジしました。シェイク・イット・オフの、クセになるノリの良さをお楽しみ下さい。

neofreudian.hatenablog.com